2023

12.

28

視覚的格付けゴムの世界

視覚的格付けゴムの世界

前回のブログから天然ゴムは大きく2種類に大別され、ひとつは技術的格付けゴム、もうひとつは視覚的格付けゴムであることはご理解いただけたかと思います。

本稿ではその中でも視覚的格付けゴムにフォーカスしその特徴や歴史について解説していきます。

視覚的格付けゴムとは…

視覚的格付けゴム とは読んで字のごとく、人の目によって選別されグレード付けされるゴムになります。英語ではVisually Graded Rubberと呼ばれ、人が1枚1枚丁寧に色目や不純物がないか等を判別する、少し原始的な判別方法を採用しています。代表的な品目はRSS(Ribbed Smoked Sheet)と呼ばれ、先物商品として世界各地の取引所で取り扱われております。
視覚的格付けゴムは主にタイヤやベルト等のゴム成形品向けの原料として使用されています。

天然ゴム RSS3

視覚的格付けゴム(RSS)

RSS – Ribbed Smoked Sheet

RSSは昔ながらの製法により製造される天然ゴムの総称であり、ゴムの樹液(ラテックス)に酸を加えて凝固させ、それをローラーに通して薄いシート状にしたもののことを指します。シート状になった天然ゴムは表面が波打つことから、あばら骨のような模様(“ribbed”)にたとえられ、これが本品目の名前の由来となっています。

それらシートは工場で洗浄後、大きな燻製窯で燻製(“smoked”)されます。燻製されたシートは1枚1枚工場内の検査員の目で色合いや不純物がないかをチェックされ、各等級に仕分けられます。

出荷前にそれらのシートは互いに折り重ねられベール状にプレスされ、皆さんが見覚えのある形に成形されてから出荷されていきます。

天然ゴム

ベール状に加工された天然ゴムRSS

グリーンブック

RSSの等級決めは”International Standards of Quality and Packing for Natural Rubber Grades
“(通称:グリーンブック)”により国際的に定められております。

RSSの等級は1~5段階まであり、最も色味が明るく不純物が少ないものがRSS1、反対に最も色味が暗く不純物の多いものがRSS5とされます。

一時期RSS1の生産量が最も多かった時代もありましたが、現在はRSS3が主流となっており、日本・上海・シンガポールなどの商品先物市場にも上場されています。

ペールクレープ

視覚的格付けゴムの中でもRSS等の燻製物と一線を画すグレードがペールクレープと言われる色味の明るいゴムになります。ペールクレープもRSSと同様に1X,1,…,5まで等級が定められておりますが、製造方法がかなり異なります。

ペールクレープの製造方法の特異性としては、色素を脱色させるために漂白剤が用いられることが挙げられます。採集されたフィールドラテックスは酸の添加により固められる際に、漂白剤も併せて添加され、そこで脱色が行われます。固まった純白のゴムはまるでモッツアレラチーズのような外見になり、複数のローラーに通され薄く薄く引き延ばされるのと同時に大量の水で洗浄されることで、余分な異物やタンパク質等が洗い流されます。

天然ゴム ペールクレープ

引き延ばされ洗浄される天然ゴム

薄く引き延ばされたシート状になった天然ゴムは「Drying Tower」という乾燥室にて3-7日間かけて乾燥されます。乾燥期間は気温や湿度により変わり、湿度が高ければ高いほど乾燥期間が延長されていきます。乾燥を経たシートは手作業にて巧みに折りたたまれ、ベール状にプレスされます。プレスされたペールクレープは輸出業者へ渡り、各国へ輸出されます。

天然ゴム

乾燥中の 天然ゴム

ペールクレープとは色味の明るい天然ゴムの総称であり、その中でもペールクレープ1X(TPC1X)は最も色味が明るく不純物が少ないため、透明度や色味の明るさが重視されるテープ向けの粘接着剤や医療用途で主に使用されます。

天然ゴム

ペールクレープ1X (TPC1X)

弊社取り扱い品目

弊社はRSSをはじめ、スリランカ産のペールクレープや、その他視覚的格付けゴムの取り扱いがございます。ご興味の御有りの方は、当ウェブサイトの主な取扱品目ページをご覧いただき、お問い合わせフォームよりご連絡を頂ければと思います!

野村貿易の天然ゴム事業に関する情報発信ブログです。天然ゴムに関する基礎知識から産地の最新情報まで幅広く情報を発信していきます。また、国内の天然ゴムユーザー様のインタビューなども掲載していきます。

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