
前回のブログから長い期間を明けてしまいましたが、改めて弊社で扱っている 天然ゴム 原料について説明させていただきます。当ホームページではこれまでに、技術的格付けゴム・視覚的格付けゴム・ラテックスという天然ゴムの大まかな製品形態についてご紹介させていただきました。技術的格付けゴムはSVRに代表されるように、ブロック形状のゴムで科学的な分析により等級が決められるゴムとなり、他方で視覚的格付けゴムはRSSのようにシート状のゴムで、人が色味の明るさによって等級分けをするゴムになります。最後にラテックスは上記固形ゴムの原料となるゴムの木の樹液であり、それにアンモニア等の添加剤が加えられたものがラテックスとして市場流通しているということでした。本稿では、上記3種類とはまた別の天然ゴムとして、SPラバー・MGラバー・PAラバーについてご説明させていただきます。
特殊 天然ゴム とは
弊社では、天然ゴム原料にポリメチルメタクリレートをグラフト重合したものや加硫ゴムと未加硫ゴムを特定の比率で配合した天然ゴムを特殊 天然ゴム と呼称しています。つまり、前段で紹介した3種の原料天然ゴムに対して、それらをさらに人工的に改良を施したのがこの特殊天然ゴムになります。弊社で扱っている特殊天然ゴムは大きく分けて3つあり、1) SPラバー、2) MGラバー、3)PAラバーがあります。1) SPラバーは”Super Processing Rubber” の略称であり、未加硫のラテックスに加硫ラテックスを混合し乾燥凝固させたものです。2) MGラバーは天然ゴム原料にPMMA(ポリメチルメタクリレート)というアクリル樹脂をグラフト重合したものになります。3) PAラバーはSPラバーと同様に未加硫のラテックスに加硫ラテックスを混合し乾燥凝固させたものになりますが、SPラバーとは異なる配合比率でそれらが混合されています。次項では、これら3種類の特殊天然ゴムの詳しい特徴や用途について解説します。
SPラバー / PAラバー
前項でご説明した通り、いずれのゴムも未加硫のラテックスに加硫ラテックスを混合し乾燥凝固させてものになりますが、未加硫ラテックスと加硫ラテックスの配合比率が微妙に異なります。基本的には未加硫ラテックスの配合割合が高いものをSPラバー(Superpoly ラバー)といい、加硫ラテックスの配合割合が高いものをPAラバー(Propoly ラバー)といいます。SPラバーとPAラバーの細かな製品リストは下記の通りです。
・SUPERPOLY20
20質量部(pdw)の加硫天然ゴムと80質量部(pdw)の未加硫の天然ゴムによって構成されるゴム。形状は視覚的格付けゴムのようなシート状と技術的格付けゴムのようなブロック状のものがございます。
・PRORPOLY80
80質量部(pdw)の加硫天然ゴムと20質量部(pdw)の未加硫の天然ゴムによって構成されるゴム。形状は技術的格付けゴムのようなブロック状のものがございます。
上記の通り独特な二相構造により、SPラバーとPAラバーの原料ポリマー特性は、通常の未変性天然ゴムとは大きく異なります。部分的に架橋されたポリマーであるため、粘度は一般に未加工の天然ゴムよりも高く、加硫成分の割合が増えるにつれて粘度は高くなります。

SPラバー(SIPERPOLY20)
技術的な利点
PAラバーおよびSPラバーは、ゴム配合における加工助剤として有用であり、その利点は、ゴム配合の流動特性を向上させ、混合物の粘度や剛性を高める一方で、最終的な加硫製品の物理的特性を損なわない点にあります。この特性により、充填剤含有量が少ない高品質なコンパウンド(化合物)の製造に役立ちます。どちらのゴムも、天然ゴムまたは合成ゴムのいずれにも使用できます。
押出成形では、金型膨張(die swell)が小さく、表面が滑らかで寸法安定性に優れているため、生産性が向上します。カレンダー加工では、これらのポリマーを使用することで収縮が抑えられ、製品の厚みの均一性が向上します。成型加工では、空気の閉じ込め(air trap)が少なくなり、低硬度の成型では加工性が向上します、またこのポリマーはブリスター(気泡)の形成や金型からの過剰な流出の問題を軽減します。オープン・スチーム加硫では、たるみや歪み、水跡がすべて減少します。これらの材料をLCM加硫に使用すれば、気孔の発生が最小限に抑えられます。
SPラバーをゴム溶媒に溶解させると、溶媒中の同ムーニー値・同濃度の他のゴムに比べて粘度が低くなります。この特性により、接着剤や印刷インキ業界で幅広く使用されています。
製品用途
- 押出製品
これらのポリマーは、チューブ、ワイパーブレード、ホース、ガスケット、ドアシール、押出スポンジ、医療用製品、成形用機械部品の押出素材など、押出製品に広く使用されています。 - カレンダリング製品
シート、テープ、カットスレッドなどの製造に使用されます。 - 成形製品
成形製品の分野でも非常に幅広い用途があります。 - 低硬度製品の処理硬度
40IRHD未満の製品は通常、調合や加工が困難ですが、SP/PAラバーを使用することでこの困難を克服できます。この特性は特に、コンピュータプリンター用のローラーの製造に活用されています。
MGラバー
MGラバーは天然ゴム原料にPMMA(ポリメチルメタクリレート)というアクリル樹脂をグラフと重合したものであり、Megapoly Rubberの略称となります。基本的に製品は無毒で、典型的なゴム臭があります。二次ポリマーであるPMMA (ポリメチルメタクリレート) というアクリル樹脂の含有量が増加すればするほど、粘度が上昇します。未加工のMGラバーは、常温では一般的な天然ゴムよりも比較的硬く粘着性がありません。他方で、加熱すると軟化するため、単独でも他の天然ゴムとの配合でも、通常のニーダーやバンバリー等の練り機で加工することができます。弊社で取り扱っているMGラバーは下記の通りです。
・MEGAPOLY30
固形天然ゴム分がPMMA(ポリメチルメタクリレート)比(%w/w)で30%含まれたもの。
技術的な利点
MGラバーは、商業的に2つの異なる分野で利用されています。一つは「自己補強ポリマー」として、もう一つは「接着剤」としての用途です。
- 自己補強ポリマーとして
PMMA(ポリメチルメタクリレート)はゴムに硬化効果と剛性を与えます。通常のゴムに様々な割合のMGラバーを添加することで、幅広い硬度を持つ加硫ゴムを製造することが可能です。引張強度を大きく損なうことなく、弾性率の向上を実現できます。高い剛性と優れた衝撃耐性を兼ね備えた硬質で柔軟な材料が得られます。これらの加硫ゴムは、高硬度の状態でも優れた物理的特性を持ち、高温でも硬度を維持します。また、優れた流動特性、曲げ割れ耐性(flex cracking resistance)、良好な電気的特性、動的疲労耐性を備えており、カーボンブラックで補強されたコンパウンド(加工品)と同等もしくはそれ以上の性能向上を期待できる可能性があります。さらに、これらのポリマーは光、熱劣化、炭化水素系溶剤による膨潤、細菌侵入に対する耐性も持っています。 - 接着剤として
MGラバーの優れた接着特性は、ポリマーの化学構造によるものです。この構造には極性成分(PMMA)と非極性成分(ゴム炭化水素)が含まれています。この特性により、極性や非極性の性質が異なるため互換性がない材料を強力に結合する優れた接着剤となります。このため、これらのポリマーは、ゴム系接着剤とポリ塩化ビニルフィルムを強固に結合する用途で広く使用されています。
製品用途
硬質で耐衝撃性のある材料としてMGラバーは、まな板や加圧不要のテニスボール、ローラースケートやホイール、硬質チューブ、電気プラグなど、様々な成形品(トレイやボウルなど)に使用されています。
接着用途としてこれらのポリマーは、接着テープ、特に感圧性のPVC電気絶縁テープ、クラフト紙テープ、マスキングテープ、保護テープ、外科用テープに広く使用されています。また、靴底、フローリング(耐油性のSRまたはPVCが低コストのゴム下地に接着される場合)、ホース、カーペット裏地、さらにゴムとPVC、合成繊維、革、その他のポリマーを接着する用途にも使用されます。
弊社取り扱い 天然ゴム
弊社はこれまでご紹介してきた通り、天然ゴム原料を幅広く取り扱っております。ご興味のお有りの方は、弊社ウェブサイトの主な取扱品目のページをご覧いただき、お問い合わせフォームよりご連絡いただければ幸いです!