これまで数回にわたり、天然ゴムについての記事を配信してきましたが、今回は視覚的格付けゴムの記事でご紹介しました ペールクレープ (Thick Pale Crepe) の産地であるスリランカに出張し、実際の製造工程などを視察してきましたので、その内容を紹介させていただきます!
【おさらい】ペールクレープとは…?
ペールクレープとは、主にスリランカで製造されるとても白い天然ゴムの総称になります。ペールクレープは人の目によって色味毎にいくつかのグレードに分類されます。その中でも色味が一番明るいのがTPC1X (Thick Pale Crepe 1X) であり、こちらは主に粘接着剤の用途で用いられます。
ペールクレープの歴史は19世紀まで遡ります。かの有名なイギリスのヘンリー・ウィカム卿が19世紀後半に70,000粒のゴムの樹の種子をブラジルから持ち出し、その後ロンドンのRoyal Botanical Garden にて育成、赤道付近に位置する旧イギリス植民地での栽培に乗り出したのをきっかけに、スリランカでも天然ゴムが製造されるようになりました。
その後も現代までスリランカでは天然ゴム製造が続き、その過程で漂白剤を用いるのと同時に天然ゴムを限界まで水洗いすることで、限りなく白い天然ゴムが製造されるようになりました。それが今日で言うところのペールクレープ (Thick Pale Crepe) であり、世界で一番色味の明るいであろう天然ゴムになります。
採集方法は現代的!? ラテックスの採集方法について
これまでの記事でも紹介してきましたが、天然ゴムの原料となる樹液(ラテックス)の採集方法はいたってシンプルかつ原始的な方法でした。雨の降っていない日の早朝に、ゴムの樹の樹皮を特殊なナイフで斜めに削っていき、傷に沿って滴り落ちる樹液を樹に設置したカップに集めます。しかれども、スリランカの採集方法はとても現代的にブラッシュアップされており、なんと専用の電動カッターを用いて樹皮を傷つけていたのです!!
電動カッターでゴムの樹の樹皮を傷つける様子
電動カッターを用いることで、均等な深さで樹皮を削ることができ、樹自体にあまりダメージが入らず、樹の寿命をある程度延長することができるとのことでした。
独特な ペールクレープ の製造工程
ペールクレープ (Thick Pale Crepe) は視覚的格付けゴムの一種であり、基本的には他のRSSやADS(エアドライシート)と同様の製造工程を経ます。ではなぜペールクレープは他の天然ゴムよりも色味が明るく不純物が少ないとされているのでしょうか?それには水と漂白剤が大きく関与してきます。
まず、原料となるラテックスが各農園から集められ、ラテックス養生槽に投入されます。
養生槽に入れられたラテックス
ラテックスは養生槽に投入された後に薬品等を添加し攪拌されます。攪拌後は凝固槽というところにラテックスを移し替え、凝固剤やここにきて初めて漂白剤が投入されます。凝固及び漂白完了後は人の手によって凝固したゴムを分け、引き延ばすためにローラーに通します。ちなみに、漂白がうまくいったかをどのように判定していると思いますか?一般的に考えれば、天然ゴムがラテックス(原料)のころの白さを保っていればいいわけですから、変色がない限り漂白がうまくいったと考えると思いますが・・・、実は、確かな判定基準が存在します。それは、漂白剤添加から数時間後に漂白剤がもとの色である黄色から緑色に変われば漂白完了の証左となるのです!
漂白後の天然ゴムが引きちぎられる様子
前段にありました通り、天然ゴムをローラーに投入して引き延ばすのですが、引き延ばす前に、胴長を着た作業員が凝固槽に入り天然ゴムを引きちぎって細かくします。ローラーには天然ゴムを引き延ばす機能だけでなく、それらを洗浄する機能もあります。ローラーの上部から常に水が出てきており、そこで余分な不純物や薬品を洗い流します。また、引き延ばし工程も1回で終わることはなく、大体10回以上ローラー及び洗浄にかけられ、天然ゴムはより薄く、徹底的に洗浄されます。
洗浄及び引き延ばされる天然ゴム
薄く引き延ばされた天然ゴムは、回転車に巻き付けられ、一定の厚さになったらカットします。カット後は乾燥室に持ち込まれ、33-35℃で3-4日間かけて乾燥させられます。乾燥後は天然ゴムシートがちゃんと乾燥しているかを確かめるため、シート表面に白い斑点がないかチェックします。白い斑点があった場合は、乾燥が不十分ということなので、再度乾燥室で乾燥させます。
乾燥中の天然ゴムシート
十分に乾燥した天然ゴムシートは今度は成形のために、ある一定の長さ及び厚さにカットされます。カットする際に、改めてゴミ等が付着していなか確認し検品します。その後、シートをミルフィーユのように何層にも重ねていき、最終的に25kgのベール状にプレス加工します。ここで閑話休題ではないですが、文中に出てくる「ベール」の意味について皆様はご存知でしょうか?ベールとは、天然ゴムの輸入単位の一般的な名称であり、素材を圧縮し米俵のようにしたもののことを言います。これまでの製造工程でもご覧いただきました通り、ペールクレープはゴムのシートを何層にも折り重ねて圧縮したものであり、まさに俵状にしたものになります。そのため、ペールクレープに限らず天然ゴムは昔から輸入単位をベールとして表すのです。ちなみに、ひとえにベールといっても製品によって重さも形も異なります。代表的な天然ゴムの重量は一般的に111.11kgとかなり重いのに対して、ペールクレープは50kg、TSR類は33.33kg等、製品によって1ベールの重さが変わってきます。
ベール状に加工されたペールクレープ
話を戻しますが、一応これらがペールクレープの一通りの製造工程になります。この後に、現地サプライヤーによってペールクレープが購入され、各々のサプライヤーが2ベール(計50kg)を1つのベールにプレス加工し、当社がそれをコンテナ単位で購入し、国内で販売させていただいております。
天然ゴム以外の小話
製造工程の他にも天然ゴムプランテーションや昔ながらのバンガロー等を拝見し、スリランカ国内における天然ゴムの歴史や文化について知見を深めることができました。特にバンガローは圧巻で、とても見ごたえのあるものでした。というのも、冒頭にご説明しました通り、スリランカの天然ゴム栽培はイギリスによる植民地時代にまで遡るのですが、イギリスはプランテーションを小高い丘の斜面に造成することが多く、その際にプランテーションが適切に運用されているかを統括するべく、丘の頂上にバンガローを建築したのです。バンガローはヴィクトリア様式よろしくコンクリートやガラスなどの、当時としては比較的新しい建設資材を用いて建築されており、その時代にタイムスリップしたと錯覚させるくらい赴きがありました。
19世紀後半に建設されたと思われるバンガロー
プランテーション視察後のお昼休憩の際に立ち寄った
また、各プランテーションを視察する際に、現地の方々が温かく迎え入れてくださり、現地のお菓子などをふるまっていただきました。就中、下記の写真にあるお菓子はとてもおいしく、日本のあんこに似ているけどサクサクした食感もあるという不思議なお菓子でした。
ふるまわれたお菓子
弊社の取り扱い品目
本稿を通して、天然ゴム・ペールクレープがどのように製造されているかご理解いただけたかと思います。弊社ではこのペールクレープをはじめとして、ベトナム産天然ゴムやその特殊ゴム等、多岐にわたり国内で在庫し取り扱っております。もし、弊社取り扱い品目についてご興味がございましたら、当ウェブサイトの主な取扱品目ページをご覧いただき、お問い合わせフォームよりご連絡を頂ければと思います!